2010年03月29日

【あれから、15年 地下鉄サリン事件】(4)「防ぎようはなかったのか」(産経新聞)

 ■守る力の原動力に

 「A線の25列車に変なものがある。確認してほしい」

 営団地下鉄(現東京メトロ)霞ケ関駅事務室で事務処理をしていた同駅の助役(当時)、豊田利明のもとに小石川運輸指令所から電話で指示が飛んだ。平成7年3月20日午前8時10分過ぎのことだ。

  [フォト]防毒マスクで完全武装して駅構内に向かう捜査員

 A線とは千代田線の代々木上原行き、25列車は運行番号を指す。ホームに駆けつけると、先頭車両の2番目の扉付近で助役、高橋一正=当時(50)=が床をふいていた。運転席で助役、菱沼恒夫=同(51)=は運転士と話をしていた。

 「変なもの」は、新聞紙で包まれたビニール袋。中身は透明な液体だった。生まれて初めて体験するにおいがしたが、素手で片づけた。手には液体が付着した。

 事務所に戻ると、菱沼は「目が見えない」と苦しみはじめた。担架で運ばれてきた高橋は意識不明だった。何が起こったのか考える間もなく、豊田の意識も遠のいた。

 豊田が2人の死を知らされたのは事件翌日、一命を取り留めて、目覚めた病院のベッドの上だった。

 「サリンのことを少しでも知っていれば、床をぬぐわせたりせず、避難させられたかもしれなかった」。豊田は悔やしかった。

 東京メトロは事件後、マニュアルを見直し、不審物には触れないことを徹底した。社内教育の充実に努めるとともに、車内放送などで乗客に呼びかけている。

 「サリン事件がいつも念頭にある」という同社は、有毒ガス発生時に特化した規定も策定。素早く乗客を避難させるため、駅間で停車させず、必ず次駅まで運転を継続させることや、地下鉄サリン事件のような同時多発テロに迅速に対応できるよう、現場レベルで対策本部を設置できることなどが盛り込まれた。

 予防策も充実を図った。当時は主要駅にしかなかった防犯カメラを全169駅に設置。「死角をなくす」を目標に、22年度末までに現在の5300台を6500台に増やす計画だ。ゴミ箱は、17年から中身が見える透明タイプになった。

 同社は「会社がこれまでで最も直接的な被害を受けた事件だった。教訓になったことは多く、二度と起こらないようにしなければならない」と力を込める。

 事件後15年たち、当時を知る社員は減った。だが、現場の全社員に救命技能認定証を取得させ、テロ警戒強化月間を毎年設け、経験を今に伝えている。

 鉄道事業者を管轄する運輸省(現国土交通省)は事件当日、運輸事務次官名で安全確保の徹底を求める通知を各事業者に出した。迅速な対応といえたが、以後しばらく具体的な方策は取られなかった。

 「米中枢同時テロが起こるまで、『テロ』という言葉が社会的に認知されていなかった。事件当時は一宗教団体が起こした一つの事件という捉え方だった」と国交省担当者は振り返る。

 同省にテロ対策などを専門にする「危機管理室」が設置されたのは17年4月。現在は新技術を使った監視カメラや化学剤の検知システムの導入に向けた取り組みを進めている。

 「装備、資機材の充実、化学テロに対する知識もすべてにおいて向上している。意識面でも当時と大きな違いがある」。警察庁がいうように、捜査や救急対応では、この15年で目に見える変化があった。

 だが、警察庁警備局幹部は「テロを起こさせてはいけないというのが一番」とクギを刺す。そのために、「事件を忘れないようにしてほしい」と訴える。

 「何とか防ぎようはなかったのか…」(同幹部)

 ずっと思い続けてきた気持ちが、「守る力」の原動力になっている。(敬称、呼称略)

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posted by wb1u6uqcud at 22:24| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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